目次1. はじめに:日本型ライドシェアがやってくる2024年4月から、東京23区・武蔵野市・三鷹市を対象に「日本型ライドシェア」が開始されました。https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00297/032600167/「Uber(ウーバー)やLyft(リフト)と同じく、誰でも自由に有償運送できるの?」と思われる方も多いでしょう。しかし、実際にはタクシー会社の管理下で一般ドライバーが参加する形となり、海外型(世界型)ライドシェアとは大きく異なるルールになっています。本記事では、そもそもライドシェアがどのように生まれたのかという起源から、日本における法規制、日本型ライドシェアの実情までを雑学形式でわかりやすく解説していきます。2. ライドシェアってそもそも何?2-1. カープール(相乗り)が起源「ライドシェア(ride-share)」を直訳すると、「ライド=乗る」を「シェア=共有」すること。つまり、もともとは純粋な「相乗り」が起源です。• *米国ではカープール(Carpool)*などの名称で古くから実践されていた• 出発地が同じ人同士が1台の車に乗ることで、• 交通費を節約できる• 渋滞緩和にもつながるこのように、営利目的ではなく互いのメリットを享受する形での相乗りがライドシェアのはじまりでした。2-2. スマホ登場で営利ライドシェアが主流にスマートフォンと配車プラットフォーマー(アプリ)の登場で、ライドシェアの形態は一変しました。• 乗りたい人の「需要」と、移動サービスを提供したい人の「供給」がリアルタイムに可視化• 一般ドライバーが有償で運転サービスを提供できるようになり、UberやLyftなどが瞬く間に普及このスタイルはタクシーとほぼ同等のサービス内容ですが、• タクシー免許(事業用免許)を持たない一般ドライバーが• 自家用車で運送を行うという点で大きく異なります。そのため、日本では「白タク」行為とみなされ、道路運送法で原則禁止されています。2-3. 世界各国の規制状況は三極化ライドシェア解禁に対しては、各国で意見や法律がバラバラです。• 全面的に解禁している(または規制が緩い)国• 一定のルールを整備して受け入れる国• 明確に禁止している国たとえば、米国やカナダ、ブラジルなどでは比較的自由度が高い一方、インド、韓国、ドイツなどでは厳しく制限されている場合があります。3. なぜ日本で自由なライドシェアは行われない?3-1. 道路運送法が禁止する「白タク」行為日本の「道路運送法」第78条では、自家用車を使って有償で旅客運送することを原則禁止しています。営利を目的とするには、*タクシーやバスなどの事業用免許(緑ナンバー)*が必要になるため、無許可の有料送迎は「白タク」として厳しく取り締まられます。3-2. 過去のUber実証プログラム中止米Uberが福岡県で「みんなのUber」というライドシェアサービスを試験運用した際、国土交通省から「白ナンバーでの有償運送は道路運送法違反」との指導を受け、中止に追い込まれた例があります。この出来事からも、日本での自由なライドシェアは事実上解禁されていないことが明らかです。4. 自家用有償旅客運送と日本版ライドシェア4-1. 自家用有償旅客運送とは?2006年にスタートした制度で、公共交通が乏しい地域や福祉輸送が必要なエリアにおいて、自治体やNPO法人が主体となり住民が自家用車で移動サービスを提供できる仕組みです。• 営利目的ではなく、燃料費や人件費程度の実費をまかなう範囲• 運転手は「2種免許」または講習を受けた1種免許保有者4-2. タクシー不足を補う新制度:日本版ライドシェア2024年4月にスタートしたのが「日本版ライドシェア」。• タクシー事業者の管理下で一般ドライバーが自家用車を使い、有償運送を行える• とはいえ、無条件で参加できるわけではなく、国が指定したタクシー不足エリアや時間帯に限られる• 運転手は過去2年間の無事故要件など一定の安全基準を満たす必要がある雑学ポイント:「好きな時に好きなだけ(=世界型ライドシェアのように)稼ぐ」形態ではなく、あくまでもタクシーを補完するために運行管理される仕組みです。5. タクシー地理試験廃止はどう関係する?2023年末のデジタル行政改革会議では、「タクシー地理試験廃止」が議論され、実施される見込みです。• カーナビや配車アプリの普及により、従来のように道を暗記する必要性が薄れた• 日本版ライドシェアでも「一般ドライバーが副業」で参入しやすい環境を整えよう、という狙いもあるただし、業界には「地理を知らなくても本当に大丈夫?」という不安もあり、安全運転や接客面など新たな研修制度が今後整備される可能性もあります。6. 日本型ライドシェアの厳しい車両要件日本版ライドシェアでは、下記のような車両要件が設けられています。1. 5〜10人乗りの車両2. 衝突被害軽減ブレーキ搭載3. 通信型ドライブレコーダーの設置通常のマイカーにこれらすべてを満たすのは容易ではありません。こうした理由から、タクシー会社が車両を用意するケースも想定されています。7. 副業ドライバーはアリ? 雇用形態と保険の課題7-1. 副業やパートタイムOK日本版ライドシェアでは、大学生や会社員が週末だけドライバーを務めるなど、パート・副業的な働き方が想定されています。タクシー不足の時間帯(深夜や土日、雨天時など)にスポット的に稼働できるのがメリットです。7-2. 保険・雇用契約が必要• 自家用車を使う場合、通常の自賠責保険だけではカバーしきれず、事業用保険の加入が必要になる可能性• 雇用契約(パート・アルバイト扱い)での労災保険など、タクシー会社が管理しなければならないポイントが多い雑学ポイント:「道路運送法をクリアしても、保険や労働法、運行管理の問題が山積み」。この点が日本版ライドシェアの導入を難しくしている要因です。8. 白ナンバーか緑ナンバーか:認可手続きのポイント• タクシー車両は緑ナンバーだが、ライドシェアは*自家用(白ナンバー)*での運行が想定される• 白ナンバーにする場合、事業用保険への切り替えや、道路運送法上の許認可が必要• 一方で「緑のまま副業ドライバーが運転できないか?」という案もあるが、法整備との兼ね合いで課題が多い雑学ポイント:「どちらを使っても結局は追加コストや認可手続きが必要」。タクシー会社と行政が試行錯誤している段階です。9. まとめ:ライドシェア解禁議論の行く末に注目米国のように“誰でもいつでも”自由にライドシェアできるわけではないものの、タクシー不足を補う「日本版ライドシェア」は2024年4月に始動しました。• 主体はタクシー会社• 安全性を担保しつつ、不足するエリア・時間帯に限定して一般ドライバーを活用しかし、まだスタートしたばかりで、保険・雇用契約・車両要件などの課題は山積みです。真の意味で自由度の高いライドシェア解禁が実現するかどうかは、今後の政治動向や業界の動き次第と言えます。今後のチェックポイント1. 行政からのガイドライン(道路運送法の運用見直し)2. 大都市部での実証実験・地方での導入成果3. タクシー業界とライドシェア推進派の折衷案の行方利用者目線では、乗りたいときにすぐ乗れる便利さと安全性とのバランスをどう保つかが大きなテーマ。引き続き、ライドシェア解禁議論の行方を見守る必要があるでしょう。関連キーワード• 日本型ライドシェア• ライドシェア規制• 白タク行為• タクシー地理試験廃止• 自家用有償旅客運送• 副業ドライバー• 緑ナンバー / 白ナンバー• カープール / 相乗り参考リンク• 道路運送法(e-Gov)• 諸外国の自家用車による有償旅客運送の状況に係る調査(国土交通省)